校友クローズアップ 髙林 昌司さん

2020年10月掲載
※所属・役職・記載内容等は掲載時期のものです

校友クローズアップ

能の面白さを伝えていきたい

能楽師
髙林 昌司さん
(2017年 文学部卒)

校友会報91号(2020年10月発行)より

校友最前線  髙林 昌司さん

能楽師の家に生まれ

プロの能の役者である能楽師の家に生まれ、幼少の頃より父に師事し稽古を積んできました。能とは室町時代より続く伝統芸能で“うたい”と“まい”と“囃子はやし”によって構成される日本のミュージカルと言えます。能楽師はそれぞれの専門職に分化しており、その専門に応じて〇〇方と呼ばれ、それぞれに流派があります。私は、謡と舞が専門で能において主役を演じる〝シテ方〟の喜多きた流という流儀に所属しています。

大学では古典文学を学び

能の脚本は多くが『源氏物語』や『平家物語』などの古典文学を典拠にしています。高校生までは、ただひたすらに稽古をしてきましたが、演技には曲の時代背景や登場人物の遍歴など、それらに描かれているテーマに触れることが必要不可欠です。古典文学を通して能のことを見つめ直してみたいと思い、日本語日本文学科へ入学。古典文学専攻の安藤徹ゼミに所属していました。古典を学んだことでセリフへの解釈が深まり、雰囲気を出す上での役作りに活かせています。また学友会の創立記念降誕会実行委員会では、四回生の時に委員長を拝命しました。その時の活動で出会った沢山の仲間が今も舞台へ足を運んでくれています。

毎日が稽古

卒業した今は毎日が稽古です。大阪能楽養成会という関西の若手能楽師を教育する機関に入り、同世代の仲間たちと共に研鑽を積んでいます。能楽師はそれぞれ自分の専門の役だけを稽古すればよいというわけではありません。一つひとつが緻密に連動して演技が成立します。そのためシテ方の舞や謡だけでなく、囃子方といわれる笛や鼓、太鼓の稽古もしています。

伝統の灯を絶やさない

現在、新型コロナウイルスの感染拡大により、能楽界は厳しい状況に置かれています。緊急事態宣言下では多くの公演が中止となり、稽古もできないような状態でした。宣言が解除された今、稽古は再開されたもののクラスター防止のため、公演の開催には多くのハードルを越えなければなりません。

全国の能楽師たちは今、伝統の灯を絶やしてはならないとSNSを通して沢山の発信をしています。私もその一員として少しでもコロナ後に向けて、日々稽古に努めることはもちろん、能を知らない人たちに能の面白さを伝えていきたいと思います。

校友最前線  髙林 昌司さん
高林さん(顕真館にて降誕会の時に能を奉納)