2017年3月掲載
※所属・役職・記載内容等は掲載時期のものです
校友クローズアップ
目の前の仕事に
お釣りを付けて返す
フリーアナウンサー
山本 浩之さん
2007年度 龍谷奨励賞受賞(1985年 法学部卒)
校友会報84号(2017年3月発行)より
子どもの頃から漠然とそう思っていたのですが、職業としてアナウンサーを選んだのは、大学2年生の後半でした。大学の放送局出身ではないので、夜は新大阪のアナウンス教室に通っていました。大学でのゼミは国際法の田中則夫先生で、ゼミ生はたったの3人。3週間に1回、発表がまわってくる。でも関西テレビに入社してニュースを担当するようになってから、国際法を勉強していてよかったと思いましたね。
入社して5年半ほど、競馬をはじめとしてスポーツを担当し、28歳のとき「アタック600」のキャスターに抜てきされ、続いて「スーパーニュースアンカー」と、14年間夕方のニュース番組の仕事をしました。
私の師匠とでも言うべき人が、競馬の実況で知られた杉本清さんでした。僕は新人時代、杉本さんの付き人みたいに、いつも一緒に行動させてもらっていました。競馬の実況で詩的な表現をするときは、前もって台本を作っているのではないか、などと言う人がいますが、事前に用意したコメントや実況では、聞いている人の胸を打つことはまずありません。勿論、放送に向けて準備はしますが最後の最後は、経験と感性から紡ぎ出される言葉です。アナウンス技術が高い低いといった次元をはるかに超えたところに杉本さんはいましたね。
フリーアナウンサーになってもう4年半になりますね。もともと僕は中学、高校生の頃から〝ラジオっ子〟でね、ラジオをやりたかった。でも関西テレビにはラジオはありません。ラジオをやりたくて、フリーになったのです。よく人は、ラジオはいっぱい喋れるからいいねと言いますが、それはテレビも同じです。でもラジオには映像がないぶん、喋り手の人間性がダイレクトに出る。この人は関心を持って喜んで喋っているのかどうか、ラジオではいっぺんにリスナーに見破られてしまいます。自分のそれまでの経験や考えなど、ベーシックにあるものを出し、それをリスナーのみなさんがどう受けとめてくださるか、そこが勝負どころなんです。
今、テレビは毎日放送の「ちちんぷいぷい」を月曜から木曜まで。また関西テレビの「ちゃちゃ入れマンデー」、ラジオは毎日放送の「ヤマヒロのぴかいちラジオ」と「茶屋町やまひろ会議」に出演しています。フリーになって、たしかに忙しくなりました。 でも若い頃は何をやっても、先輩から叱られていました。カメラに赤ランプがつき本番になると、身構えてしまって自分をそのまま出すことができない。失敗の連続です。そういうときにこそ基本に戻ってと、もう一度声を出し直し、体勢を整える。入社して数年間は、もがき続けていました。 ですから大きな目標を持つのをやめました、目の前の仕事にお釣りを付けて返す。山本はこれくらいの仕事はできるだろうという評価に、どうすればプラスアルファーと意外性をつけて返すことができるのだろうかと、そればかり考えていました。若い頃から、そして今も大きな目標を持たないようにしています。
山本 浩之(やまもと・ひろゆき)=愛称ヤマヒロ
龍谷大学法学部を卒業後、アナウンサーとして関西テレビ入社。 1990年から7年間「アタック600」のメインキャスターとしてニュースに携わる。 2002年、前年に放送された『ほっとカンサイこの1年NYリポート』に対する評価で、第18回FNSアナウンス大賞受賞。2006年から「スーパーニュースアンカー」のメインキャスターを務め、2013年にフリーアナウンサーに。 2014年、MBSラジオ「ヤマヒロのぴかいちラジオ」で、日本民間放送連盟賞生ワイド番組部門で優秀賞受賞。現在テレビ・ラジオで活躍中。 2007年、龍谷奨励賞を受賞。