2022年9月掲載
※所属・役職・記載内容等は掲載時期のものです
校友クローズアップ
好きなことは最後まで
作詞家
井筒 日美さん
広報誌「龍谷」95号(2022年9月発行)より
「作詞家だから文学部卒と思われがちですが、実は法学部卒なんです」
幼少期は祖父母の寺の境内で遊び、古語や歴史に触れる環境がそろっていました。結構理屈っぽい性格で理論家だと自己分析し、そこが向いているのではと直感的に受験したのが法学部。当時は男子学生ばかりで、自身は大人しい学生だったと振り返りつつも、大学時代に鍛えられたノウハウは、今に通じています。作詞という仕事はタイトなオファーが多く、集中力や洞察力が必要で、ゼミで発言発表する際に言葉を頭で整理していたことが役に立ち、それらを最後までやり遂げる事が大切と教えられ、鍛えられました。
言葉は生き物。今私たちが使っている言葉も、いにしえの人々からすると美しい言葉かどうか。私たちが揶揄しがちな若者言葉を未来の人々はどう感じ取るだろうか。若いミュージシャンの歌詞や楽曲から得るものも多く、いつも良い影響を受けています。
言葉のチェイスやセンスを磨くためにタロットカードも制作しています。78枚のカードの意味を元に、選ばれたカードから物語を創作します。
作詞の仕事は曲が先で歌詞をはめ込む作業になりますが、小さいころから文章やエッセイを創作することが好きで、楽曲のテーマが決まっていてもメロディーを聴いて思わぬ発想が浮かびます。5歳のころからピアノを習い、仕事上音感を鍛えるために今でも練習しています。好きだからこその思いから音楽作家のデータベースを作ったことがきっかけで尊敬していた松井五郎さんに作家事務所を紹介していただけて、柴咲コウさんの歌詞を手がけて初めてコンペに合格しました。
富士通ディーラーでOA機器のインストラクターをしていたことも、大阪スクールオブミュージック専門学校で作詞の講師をする際役立ちました。今の学生には、楽しむことを忘れず、変わっていくものを恐れず、構えることなくどんどん発言してほしいと思います。自分に自信がなくても受け止めて理解をしてくれる人はちゃんといる。だから自分を責めず流されずにいてほしい。上手に逃げ場を作ることも現状打破のきっかけになるのではないでしょうか。
井筒 日美(いづつ・ひみ)
法学部卒業。富士通ディーラーにOAインストラクターとして勤務。05 年に柴咲コウ「あどけない温もり」で作詞家デビュー、07 年にはタッキー&翼の「SAMURAI」がオリコン週間第 1 位を獲得するなど現在も活躍中。17 年には大阪スクールオブミュージック専門学校で作詞講座の講師を務める。著書に『ゼロからの作詞入門』(ヤマハミュージックメディア)がある。