校友クローズアップ 鈴木 史郎さん

2022年3月掲載
※所属・役職・記載内容等は掲載時期のものです

校友クローズアップ

ベストな医療を考え、生活を根本から支える医療

医師
鈴木 史郎さん
(2002年 社会学部卒)

校友会報94号(2022年3月発行)より

校友クローズアップ 鈴木 史郎さん

やはり自分には福祉の道

児童福祉に関心があり、臨床福祉学科に入学し、サークルではBBSという少年の健全な成長支援を目指す活動に携わっていました。 就職した塾では不登校児の指導にも力を入れ、仕事は楽しく順調にいっていましたが、ふと「今、本当にしたいことができているのか?」と考えたのです。その時、自分の夢や目標をしっかり持って福祉の現場へ進んでいった大学時代の仲間達を思い出し、「自分も大学で学んできたことを生かし、医療や福祉に貢献したい」と一念発起し、医者を志しました。

海外医科大学へ留学

医学部を調べる中で、まず金銭的な壁が立ちはだかりました。大学卒業まで学費を出してくれた親に再び負担をかけたくはなかったのです。私立は学費が高い、実家から通学圏内にある国立は難易度が高い、かといって地方の国立は生活費がかかる…そこで、世界へ視野を広げることにしました。そうして、物価も学費も日本の6分の1であり、かつ兵庫民医連の奨学金申請が承認されたことも後押しとなって、ブルガリア国立プレーベン医科大学へ進学することを決めました。

校友クローズアップ 鈴木 史郎さん
プレーベン医科大学付属病院
校友クローズアップ 鈴木 史郎さん
ブルガリア(卒業式)

高い壁を乗り越えて

授業は全て英語なので、勉強についていくのに必死でしたが「自分で選んだ道と場所で学びたいことを学んでいるのだから、ここでやめるわけにはいかない」という強い気持ちを源に、最後まで踏ん張りました。ただ、道半ば辞める仲間も多く、卒業時には、同大学初の日本人卒業生となっていました。

何度挫折しても諦めない

日本で医師となるには、欧州の医師免許とは別に日本の医師国家試験にも合格する必要があります。予備校に通うお金はなかったので、バイトをしながら、医師国家試験合格に向け宅浪している人にSkypeで呼びかけて勉強会を立ち上げ、モチベーションや学習効果を高めました。結局、日本の医師国家試験合格まで3浪しました。最後の1年は「泣いても笑ってもこれで最後の挑戦にする」とブログで宣言し、遂に合格することができました。

僕の今の夢

医師になると、初期研修の2年間で様々な科を回り、3年目で専攻分野を選択します。龍大生の頃からの思いがあり、幅広い年齢の患者さんや疾患に携わり訪問診療も行う総合診療専門医課程に進みました。患者様にとってのベストな医療を考え、生活を根本から支える、自分がしたかったことに取り組める喜びを、日々感じています。

結果だけ切り取れば、医者=成功者といったイメージを持たれるかもしれません。しかし、遠回りと度重なる困難の中でも夢を諦めなかったから、今があります。まだまだお手伝いできる範囲は狭いですが、研鑽を続け、地域全体から慕ってもらえる医師になるのが今の夢です。

校友クローズアップ 鈴木 史郎さん
クリスマスに行われた総回診

鈴木 史郎(すずき・しろう)

02年3月社会学部臨床福祉学科卒業。学生時代はボランティアサークルBBSに所属。02年4月大阪府内で塾講師として就職。09年2月プレーベン医科大学医学部医学科入学。同大卒。19年3月第113回医師国家試験合格。同年4月から21年3月まで初期研修。21年4月から専攻医となり東神戸病院に勤務。