2018年3月掲載
※所属・役職・記載内容等は掲載時期のものです
校友クローズアップ
体をもとに戻し、美しい字を書く
書道家
武田双鳳(本名 武田哲史)さん
2019年度 龍谷奨励賞受賞
(1999年 法学部卒業)
校友会報86号(2018年3月発行)より
3歳ごろから書道家の母双葉さんから書道を教わり、よく泣きながら書いていました。
高校時代はひきこもりで、まともに学校に通ったのは半年ぐらいです。ほかの生徒と別の教室で勉強していましたが、勉強そのものは大好きでした。大学受験では、熊本に試験会場のあった龍谷大学を受け、法学部政治学科に合格。修学旅行で京都が気に入り、龍谷大学に決めました。
田北亮介先生のゼミでは、日米安保や国際政治などを研究しました。卒業に必要な単位の多かった政治学科を卒業できたのも、テニス部で出会った一歳下の彼女(奥様)のおかげです。向島学生センターでの寮生活は、外国人留学生や他大学の学生たちに囲まれて楽しく、スイミングクラブのインストラクターや家庭教師などのアルバイトもしていました。
就活で多くの学生が同じ格好をしていることに違和感がありました。23歳の時に行政書士と社会保険労務士を受験して合格。四条烏丸の早稲田セミナー(現在「資格の学校TAC」)にスカウトされ、講師として法律を教えることになりました。
1日9時間立ちっぱなしの授業のほかに、龍大や立命館大で公務員講座を持ったり、社会保険労務士として企業を回ったりして、激務の日々が続きました。
そんな中、32歳で書道師範を取得し、2年前に書道に専念するためほかの仕事を辞しました。子どもとの時間を大切にしたかったことも理由の一つです。
書法道場でよく言うのは"場"の大切さ。机の上や道場を常にきれいに保つこと。おやつタイムは「有効な無駄」で、そこから生徒同士の横のつながりも生まれます。書道とは、「自分を戻すもの」だと考えます。書道道具は、無になるための道具です。一方、書道以外のことから見えてくるものがあり、若いころ携わった法律は論理的な思考を必要とする点で書道と共通しており、現在の活動に役立っています。
書法道場では、緊張して固くなった体をもとに戻す〝ひもトレ〟から始めます。体が緊張していると体がぶれやすく、書く字もぶれます。本来の体に戻すと、美しい字が書けるんです。笑うことも体をもとに戻す方法ですよ。
武田双鳳(たけだ・そうほう)
熊本県出身。書道家の母武田双葉に師事(兄は双雲、弟は双龍)。99年法学部卒業後、行政書士と社会保険労務士の資格を取得。社会保険労務士事務所に勤務する傍ら、大手予備校の法律の授業を15 年以上担当。32歳で書道師範を取得。アーティストとして海外の企業とのコラボレーションや経営者向けの筆文字講師も務める。主宰する京都と大津の書法道場には全国から門下生160人が集う。
2019年、龍谷奨励賞を受賞。