2023年3月掲載
※所属・役職・記載内容等は掲載時期のものです
校友クローズアップ
ワクワク楽しい生活を
社会福祉法人わらしべ会 理事長
辻 和也さん
(1989年 文学部卒)
校友会報96号(2023年3月発行)より
大学では野外活動認定同好会(現 野外活動部)に所属していました。キャンパス内の勧誘ブースで勧誘されたのですが、フレッシュマンキャンプでレクリエーションをされていた先輩の印象もあって「楽しそう!」と入部しました。近くの子どもたちとキャンプをするなど、野活中心の学生時代を送っていました。
就職活動の際、父親に「ネクタイを締めて仕事をしたくない。ジャージを着てできる仕事がいい」と相談したところ、短期大学部社会福祉科の教授が遠い親戚だと教えてくれました。教授の所に挨拶に行って相談し、「わらしべ会」を紹介していただきました。私は教育学専攻卒でしたので、障がいのある方がどういう人なのか分かりませんでした。社会福祉士や介護福祉士の資格ができたのもこのころで、福祉についての書籍も少なく、現場で一から教わるしか方法はありませんでした。ただ、仲間に恵まれ、仕事に慣れるのは早かったと思います。
社会福祉法人わらしべ会は81年に医師によって創設されましたが、それ以前に肢体不自由児の訓練方法としてハンガリーのペトゥシステムを導入し、わらしべ学園でその実践をされていました。医師は代々柔道家の家系で、柔道療育、障がい者乗馬などユニークなプログラムを実践されてきました。私もそれまでやったことのなかった柔道に取り組むなど、障がい者スポーツに携わることになりました。医師はスリッパの並べ方や電気の消し忘れ、柔道着の乱れなど、人としての在り方にとても厳しい方でしたが、その教えは今も受け継がれています。
30代から40代の頃、障がい者柔道の引率でヨーロッパ各国に行きました。そこで、日本とは違う福祉に触れることになり、やる気になったとともに、ヨーロッパの福祉を取り入れたいと強く思いました。日本の障がい者スポーツは競技に限定されており、例えば柔道であれば受け身ができる必要がありますが、ヨーロッパでは例え受け身ができなくても、できることがあるのならやったらいいという考え方で、間口がとても広いんです。今でいうノーマライゼーションでしょうか。
その経験からか、若手職員の育成を目的として、ケニアで医師が作った施設に研修に行ってもらったり、ホノルルマラソンに参加する障がい者の引率者として同行してもらっています。実際に現地に行き、障がい者の移動や食事、バリアフリーの対策はどのようになっているかなど、職員が勉強し経験したことが利用者の幸せに繋がると考えています。
学生時代はあまり勉強をしていませんでしたが、30代後半から様々な本を読むようになりました。特に歎異抄が好きで、その影響からか「これでやるしかない。やるだけやろう」という気持ちで取り組んでいます。アイデアで彼らの生活に結び付くワクワクを創出し、私と職員と利用者が一緒に楽しめればいいなと思います。
辻 和也(つじ・かずや)
「社会福祉法人わらしべ会」に就職。以来30年以上障がい者の支援を続けている。その間障がい者柔道の普及や欧州での研修にも数多く参加。現在は理事長としてグループホームを開設し、また就労定着支援や生活介護支援など、障がい者を地域と共に支援する事業を展開している。