2010年9月掲載
※所属・役職・記載内容等は掲載時期のものです
校友クローズアップ
今を大切にすることで
素晴らしい明日をつくっていきたい
教恩寺住職・シンガーソングライター
やなせなな(本名 梁瀬 奈々)さん
2010年度 龍谷奨励賞受賞
(1999年 文学部卒)
広報誌「龍谷」70号(2010年9月発行)より
寺院の本堂をステージに「命」をテーマに法話をおこない、「命」をテーマとする歌を歌う、浄土真宗本願寺派の僧侶であり、シンガーソングライターでもあるやなせななさん。やなせさんの寺院コンサートは、時には歌と法話を耳に した参加者が涙することもあるといいます。
「私は布教使というわけではないですし、ありがたい話ができるとは思っていないんです。御法儀についても、私なりの解釈を交えて話しています。『私はこう思いますが、皆さんはいかがですか』と」
30歳を目前にして、やなせさんは子宮体ガンを患いました。子宮と卵巣を全摘出しなくてはならなかったほどの大病でした。
「ガンは私にとって大きな転機でしたが、長く生きれば多くの方が病を経験します。寺院コンサートのお客さんはほとんどが年配の方ですから、私以上に困難な病をご経験された方もたくさんいらっしゃいます。『命』について共感してもらう『きっかけ』になればと、ガンの経験に触れることもあります」
2008年まではメジャーデビューをめざしてオーディションを受け続け、事務所にも所属するなど「歌手やなせなな」一本で生きていくことを夢見ていました。
「テレビに出演したり、大きなホールを満員にしたり、僧ではなく歌手として成功するという欲を捨てきれなかったんです。そんな私が僧として生きることを決めたのは龍谷大学時代の友人と再会したことがきっかけでした」
学生時代をともに過ごした真宗興正派の友人に依頼されて講師を務めた研修会で、やなせさんは今まで感じたことのない「やりがい」を感じたといいます。「たくさんの人を前に話すうち、ふいに“これだ”と、すとんと胸に落ちる感覚があったんです。“これが私の天職なんだ”と」。語りかけるということ。想いを伝えるということ。現在の活動につながる気づきの瞬間でした。
その後やなせさんは僧として生きる第一歩として教師教修を受けます。「教修中は不勉強を実感する毎日。龍谷大学時代のノートにはずいぶん励まされましたね。『まがりなりにもこれだけ勉強してきたじゃないか』と」。現在は生家でもある教恩寺で住職となり、「歌手であり僧」という活動で自身の道を歩み続けています。
「明日のこと、未来のことを考えて今を生きるのではなく、今を大切にすることで素晴らしい明日をつくっていきたいと考えています。歌手として、住職として、今私に与えられた役割に精一杯取り組んでいきたいですね」
やなせなな(本名 梁瀬 奈々)
1975年 奈良県の寺院に生まれる。
2004年5月 シングル『帰ろう。』でデビュー。これまでに5枚のシングルと4枚のアルバムを発売。CMソングやゲームのテーマソング、劇中歌などに起用される。その一方で、YAMAHA『音遊人』エッセイ連載(2006年~)、ラジオのレギュラー番組DJ(Date fm 2012年~)、仏教講座講師など多彩な活動を展開。30歳で子宮体ガンを克服した経験と、寺院に暮らす僧侶という視点を生かし、いのちの尊さを訴える歌を数多く制作。慈しみに満ちた唯一無二の世界観、美しいメロディ、包容力のある歌声が持ち味で、年代・性別を超えた幅広い層から確かな支持を獲得している。また、涙あり笑いありの巧みなトークと、胸を打つライブパフォーマンスが話題となり、全国47都道府県・およそ500ヶ所での公演において成功を収めた実績を持つ。地道な活動が注目され、2011年3月 日本テレビNNNドキュメントユ11「歌う尼さん~がん闘病から奏でる命」として、2012年9月にはNHK Eテレ「グランジュテ」にて全国に放映され、大きな反響を呼んだ。その活躍が認められ、母校・龍谷大学校友会より龍谷奨励賞を授与されている。[やなせななオフィシャルホームページより]