2023年5月掲載
※所属・役職・記載内容等は掲載時期のものです
桂 優々(本田 彬洋)さん
卒業年:2009年、卒業学部:文学部
所属サークル:落語研究会
所属ゼミ:高橋ゼミ
落語家
校友会の皆様、はじめましての方ははじめまして、桂優々と申します。
2009年に師匠である桂雀々に入門し、2023年現在15年目ですが、まだまだ若手の落語家です。自分がこうして落語家になり生きていけるのは、周りの良縁に結ばれてるからだと思っています。そんな縁を結んでくれたのが龍谷大学で、もし入学できてなかったら落語家にはなってないといっても過言ではございません。そう、すべては仏様のお導きのおかげ!…なんて言うと怪しい勧誘のように聞こえますが。
「小さい時から落語を聞いていたのですか?」と聞かれますが、私が落語を聞くようになったのは大学に入ってからです。もちろんお笑いは好きでした。漫才やコントはいつもテレビで見てましたし、練習が午前で終われば必ず見るほど新喜劇が好きで、一度は漫才がしてみたいと考えていました。ただ、高校まではずっと野球部で過ごしてきたので、漫才のネタを作る時間もなければ、勉強する時間もありませんでした。
一浪の末に、良縁に結ばれ龍谷大学に入学。入学式の日、一浪で落ちた体力でも通用しそうなサークルはないかと探していると、目に飛び込んできた看板、『落語だけでなく漫才、漫談、三味線もできます』…これが、私をこの世界に導いた悪の根源でした。思わず、新歓をしている落語研究会、いわゆる落研のブースに飛び込んでしまいました。
世間はちょうどお笑いブーム真っ只中。さぞかし沢山の部員がいるのだろうと思えば、先輩は3人と言う寂しい人数。ただ、このお三方がそれぞれとても個性の強い方々で、私を含め7人入った同期もそれぞれ色が違うからまた面白い。しかし、漫才をしたくて入ったのに相方が見つからず、結局は落語をさせられる事になってしまいます。
「落語」と言うものをご存知でしょうか?見たことない方でも、座布団の上に座り左右を向きながら話をしていく、そんなイメージはつくと思います。同時に、「古臭い」「年寄のおじいちゃんがやってる」「伝統的で難しい」といった印象をお持ちの方もおられるのではないでしょうか?
落研に入り落語を初めたての私は、上記のイメージを全て持っていました。固定概念や食わず嫌いと言うのは恐ろしいもので、そんなネガティブなイメージをずっと抱えながら落語を聞いていると、面白いものも面白いとは思えないものです。聞いていて面白くないのですから、それを自分が演じてお客さんが面白いと思うはずがない。入部して1か月、やりたい漫才もできず、面白くない落語をやらされるなら、早く退部しようかと考えていました。そこで辞めなかったのは、今考えるとついていたというか、これも良縁のおかげで、落研の先輩同期、また派遣された紫朋館運営委員会での交友関係が、大きな要因です。
退部を考えていた5月21日、この常識降誕会の日は大学がお休みになります。ただ、1回生の私はそれを知らず普通に登校。もちろん休講で、実家の滋賀から往復2時間という無駄な時間を過ごして帰宅すると、ちょうどNHKで「日本の話芸」という落語番組がやっていました。そこに出ていたのが、後に我が師匠になる桂雀々。ネタは「代書」、大師匠桂枝雀直伝の十八番ネタです。
普段なら即チャンネルを変えていたと思うのですが、何の気なしに師匠の落語を見ていました。「古臭い」「年寄のおじいちゃんがやってる」「伝統的で難しい」そんな全ての固定概念が、リビングにいる私の笑い声で飛んでいくようでした。落語で初めて腹を抱えて笑い、「こんなに面白いものなのか!」と全てが覆されました。
そうなると、今度はどんどん落語にのめり込みます。学生でお金がなかったので、授業やバイトの合間を縫って値段の安い落語会を探して見に行ったり、部室のカセットやビデオ、図書館にあった枝雀全集を見あさったりしていました。図書館で大きな笑い声がこだましてたはず…犯人は私です。勉強の邪魔をしてしまい申し訳ございませんでした。
もし5月21日が休講でなければ、落語の固定観念をもったまま過ごしていたかもしれませんし、桂雀々の元に弟子入りしていないことは確実でしょう。
『良縁に結ばれ』龍谷大学に入学したと書きました。実は私、龍谷大学より偏差値の低い大学は全て落ちています。受験した中だと、龍谷大学が一番偏差値の高い大学でした。
そして今、落語家として生活していけるのも、同級生が落語会に足を運んでくれたり、住職になった友達が仕事で呼んでくれたりするお陰です。
勉強もあまりできん私を龍谷大学に入れていただき、沢山の良縁を結んでくださったのも、仏様のお導き!…こない言うとまた怪しい勧誘のようになりますので、ここで筆をおきます。
学友の皆様、OB・OGの皆様、私の駄文をご拝読下さりありがとうございました。
桂優々を見かけたら落語会に足をお運び下さい。高座から一生懸命おしゃべりして笑顔をお届け致します。
また、こんな桂優々と新たにご縁を結んでくださる方もお待ち致しております。着物と座布団をもってどこへでも伺います。
※下記のチラシは当時開催されたものです