現代生活が様変わりしても、日々、この国で暮らす私たちには今もこの美しい文化への想いが息づいています。 日常の中で、本当の豊かさとは何か?と考えた時、そのひとつの答えが 自分自身の仕事にあると気がつきました。 つまり「帯」の存在です。気の遠くなるような作業を経て織り上げる帯は、一見 無駄に思える ひと手間ふた手間をかけます。 締め味にもこだわり、手に取った時の心地よい風合いを目指して織られます。たとえば図案を紋図(もんず)におこす時、コンピューターを使わずに、あえて手描きですることにより、ぱっと見た目ではわかりませんが より奥行きや深みが増すのです。
一色に見える色でも何色もの糸を紡ぎ合わせたり、金銀糸、箔などの さまざまな材料を合わせることによりさらに生きた色調になり、芯の色はより深まっていくのです。スピードと利便性に とかく流されそうな現代にあって時代に逆行するようなモノ作りをしていますが、むしろそのように時間をゆっくり流し、無駄を省かない。 それは、いいものを作る上で一番大切なこと、と私は信じます。
[京都] 木村 博之 キムラ ヒロユキ
経営学部 1985年卒 片岡ゼミ