校友クローズアップ 魚見 航大さん

校友クローズアップ

「障害とは可能性を見限ること」
心を磨く靴磨き事業
“与えられる存在”から、
“与え、分かち合う存在”へ

株式会社 革靴をはいた猫 代表取締役
魚見 航大さん
(2017年 政策学部卒)

魚見 航大さん

私は2回生の時、深草キャンパスにある障害者が働く「カフェ樹林」と出会いました。当時、働いていたスタッフの時給は低く、目の前の作業を淡々と繰り返していました。一緒に時間を過ごす中で話してくれたのは「僕も自立したい」という思いでした。

障害の有無に関わらず、カフェ樹林から[自立して社会で活躍するメンバー]を輩出しようと活動が始まりました。働きがいをもって一生打ち込める仕事を探す中で、カフェ樹林の店主から「靴磨き職人はどうか」とアドバイスをもらいました。まずは学生が靴磨き専門店で修行をし、学んだ技術をカフェのスタッフに伝えていったのです。

人によっては時計が読めないこともあり、文字通り右も左も分からない状態からのスタートでしたが、必死に技術を習得していきました。大学を卒業する前日、粘り強く挑戦する仲間に背中を押されて会社を立ち上げました。

カフェで出会った障害のある2人は、今では職人として会社を支えています。企業への[出張靴磨きサービス]からスタートし、お客様からたくさん喜びの声をいただきました。ある時、出会った頃はコミュニケーションを避けていたメンバーが「自分のお店を持ちたい!」という夢を語りました。彼のまっすぐな想いに多くの方が共感と応援を寄せてくださり、京都の御池通り沿いに[1号店]をオープンできました。

これまでに磨いた靴は1万足以上です。お客様や応援してくれる人に[勇気と希望]を与えていく彼らは、靴を磨きながら自分の心を磨いてきたのだと気づかされました。
その姿を見て「自分も職人になりたい」と全国から人が集まっています。中には、10年の引きこもりを二度経験しながらも一緒に働きたいと立ち上がったメンバーもいます。今では最初に立ち上がった2人が、新しいメンバーに技術を教えてくれています。私たちはこの挑戦の連鎖をつくっていきたいのです。

正直、カフェで出会った時は「支援をしてあげないと」という思いでした。しかし彼らに、私自身に必要だったのは、[共通の目的を持ってお互いに高め合う仲間との関係性]だったと思います。新たなメンバーと出会う度に「頑張りましょう!」と声をかけます。ですが、口ではそう言いながらも、心のどこかで「ほんとに人の役に立てるかな?」と諦めが湧いてくることがあります。確かにそういう自分がいるのです。そうした諦めは、見ないようにしているだけで、いつでも、誰の中にでもあるのではないでしょうか。

「障害とは可能性を見限ること」毎日その葛藤との戦いです。
ひとりでは投げ出してしまうかもしれません。しかし、粘り強く向き合って「目の前のこの人をどう活かせるか」と本気で考える仲間たちがいます。
私たちの中には、たしかに人の可能性を引き出す関係性があります。この強みをさらに磨き、社会全体に広げていきたいと思っています。

2025年に開かれる大阪万博のテーマは【いのち輝く未来社会のデザイン】です。学生時代の活動から数えると7年、私たちの挑戦はまさにこのテーマでした。

まだまだ潜在的な力が眠っている障害者、ひきこもりがたくさんいます。2025年、大阪万博で命を輝かせた職人達と共に、孤立している人々や高齢者の命を輝かせることが目標です。

経営の神様である松下幸之助さんは「人間は磨けば光るダイヤモンドの原石のようなもの」と言葉を残されました。私たちもこの思いを忘れずにチャレンジします。

学生MTの様子
学生MTの様子
革靴をはいた猫
革靴をはいた猫

魚見 航大(うおみ・こうた)

2017年龍谷大学政策学部卒業。大学内にある障害者と学生が働くカフェ「樹林」との出会いをきっかけに多様な若者が共に活躍できる仕事をつくることを決意。「職人」をキーワードに大阪の靴磨き専門店での修行を経て、在学中に訪問型の靴磨きサービスで起業。2018年2月に京都市役所西側に実店舗もオープン。