校友KIKOU 心をつむぐ落語を生業とする生涯

2023年12月掲載
※所属・役職・記載内容等は掲載時期のものです

校友KIKOU 林家染二 さん

吉田 忠史(三代目 林家 染二) さん

卒業年:1985年、卒業学部:法学部
所属ゼミ:行政法永良ゼミ

株式会社SOMEJI 代表取締役 公益社団法人上方落語協会会員


1984年 二代目林家染二(現四代目林家染丸)に入門。林家染吉
1997年 三代目林家染二を襲名

龍谷奨励賞、文化庁芸術祭大衆芸能部門大賞など多数受賞。上方落語担う正統派として高い評価を得ている。龍谷大学文学部キャリア開発論特別講義のほか、落語家で初めて京都大学に出講し2012年から年に一回宇宙総合学(全学部一・二回生対象)で登壇している。

1981年龍谷大学法学部入学。学籍番号J81511。行政法永良ゼミ所属。4年生の9月に師匠二代目林家染二(現四代目染丸)に入門し、修行と卒論の両立は大変だろうと、永良先生に親身に御指導いただきました。卒業してから38年経過しても忘れません。

よく落語家になったきっかけを皆様にお尋ねいただきますが、中学校社会科教師を目指したものの教員採用試験に不合格となったことが要因です。今考えれば、よく大胆に未知の世界へ足を踏み入れたと思います。結婚し、子ども二人を社会人になるまで育て、二人の孫を持ち、39年も落語家として生活してこれたことは、奇跡としか言いようがありません。その道のりの、若手で苦悩していた時代、教職課程の教育心理学で「自己啓発」を学んだことは大きな前進の糧となりました。 さらに、落語家を選んだことで、宗門、龍谷大学校友会をはじめ幅広くご縁をいただいていることに感謝しております。

プロフェッショナル仕事の現場 林家染二独演会

校友KIKOU 林家染二 さん
(2023年10月28日 エルセラーンホール) 撮影:佐藤浩

落語を様々なところで演じさせていただきますが、一年間で最も大きな公演は大阪での独演会です。今年も10月28日に「林家染二独演会2023」を昼夜開催させていただきました。校友会の皆様にもご来場、ご支援いただいております。

校友KIKOU 林家染二 さん

独演会では、二席上演致します。公演日の設定、自分の演目の選定、ゲストや出演者を含めた番組構成、チラシのデザイン発注と校正、新聞社などメディアへの対応、お客様へのDM原稿など約一年前から準備を始め、マネージャーの妻がサポートしてくれます。

そして、体調管理に留意しながら稽古に励みます。独演会大阪公演は、一年の集大成です。お客様の大切な時間とお金をいただいていますから、何よりもお客様にお楽しみいただくことを大切に考えます。大阪公演は、文化庁芸術祭にエントリーし、文化庁芸術祭大賞、二度の文化庁芸術祭優秀賞を受賞した勝負の場でもありました。

高座に上がる瞬間は少々厳しい顔をしています。座布団に座ってお辞儀をしたところからお客様と対峙し、一期一会の闘いがはじまります。

校友KIKOU 林家染二 さん

今回のトリネタは「火事場盗人(小佐田定雄作)」。火事の火の粉から守る為、生後間もない女の子をつづらに入れて逃げる時に、父親である商家の主人が、闇夜に奉公人と間違い出来心で盗みに入った男につづらを託してしまいます。偶然の再会は18年後。火事に翻弄された親子の縁を描いた人情噺。大工の嫁が赤ちゃんを抱く姿。手の中に赤ちゃんがいるようにご覧いただけたでしょうか。

校友KIKOU 林家染二 さん

演じ終えて深々とお辞儀。この瞬間は感謝の思いしかありません。林家の教えは「十方御客」。東西南北・四隅・天地。ありとあらゆるお客様に感謝して舞台を勤める。緊張が残り、このあと三時間程食事がのどを通りません。無事に終演でき、まさに感謝しております。

コロナ禍を支える支援の輪

校友KIKOU 林家染二 さん

コロナ禍は、多くの皆様に苦難が迫りました。落語家は、舞台表現を基本とする仕事ですので、公演中止や客席半減など大きな打撃の連続。そこに、支援の手を差し伸べてくださったのが、法学部同窓会・成松重人会長でした。短期大学部出身の寄席三味線方・東野良美(はやしや都美礼)さんとの法学部同窓会主催オンライン講座を開催できることに。校友はじめ広く一般の、コロナ禍にいらっしゃる方々へ、寄席の魅力の元気発信というコンセプトで行いました。落語家である私と寄席のお囃子を演奏する東野さんの仕事の軌跡の紹介、寄席囃子のライブ演奏、そしてご視聴の皆様と双方向のQ&Aと、たくさんの皆様にお楽しみいただき、私共も皆様に背中を押していただける貴重な機会となりました。

カムバックキャンパス 文学部キャリア開発論(文学部教務課・心理学部教務課)

校友KIKOU 林家染二 さん

昨年から、文学部「キャリア開発論」特別講義に出講させていただいております。言葉を生業とする落語家の修行や、コミュニケーションの基本、雑談力やプレゼンテーションに向けた発声・発音の実践。「しゃべる」は、音声による情報の自己発信。「話す」は、人を思い自分の言葉で語り伝えること。この様な内容で、私が学生時代に龍谷大学の講義で人生の糧となる言葉を得られたように、少しでも学生の皆様のお力になれればと思っております。受講生の皆様の真摯な態度に、背筋が伸び、私も学ばせていただいております。

うれしく読ませていただいている受講生の感想の中から、特に感激した文章を一部抜粋してご紹介します。

「有意義な時間だった。講義が始まる前に控えている染二師匠を見た時、失礼ながら『偏屈そうな人だな』と思ったのだが、前に立って口を開いた瞬間、そんな考えが吹き飛ぶほど良い人だと感じ、最初にそう思った自分を恥じた。」

講義では「ファーストインプレッション」についてもお話ししていますので、自己実践を評価していただき、感涙にむせぶ思いです。

円熟期を迎える決意

校友KIKOU 林家染二 さん

落語家は、円熟期を迎える60歳代が勝負と言われています。現在62歳の私も、その途上を歩み出しています。さらに芸道精進し、後進の育成にも傾注しながら、幅広くお客様にお楽しみいただけるよう努力し、大衆芸能文化の発展に寄与して参りたいと思います。

お声をかけていただければ、全国どこへでも馳せ参じます。生の落語の、笑いと涙の感動の世界に、ぜひふれてみてください。どうぞよろしくお願い致します。ホームグランド天満天神繁昌亭へもどうぞご来場ください。

龍谷大学のさらなる発展と、校友会はじめ有縁の皆様のご健勝とご多幸を念じております。